偉人のイメージを覆す その1
- 忍性 『忍性の真実・極楽寺良観と戒律』
鎌倉時代の僧、忍性は癩者(ハンセン病患者)を背負って市を往復したとの崇高な伝説がある。鎌倉に来ても病院を作り、貧しい者たちに施しをした聖人として崇敬されている。しかし、忍性には極楽寺良観という別名がある。こちらの方は幕府を裏で操って利権をむさぼる極悪非道の僧とされている。まさに極悪と極善である。なぜこのような二つの像が分裂したまま現代に至っているのか。忍性研究者が、忍性の慈悲のイメージを壊すことを恐れて極悪と批判している日蓮遺文の研究を無視してきたからであろう。一方、日蓮遺文研究者は宗教研究で、開かれたものではなかったので、一般にはあまり知られていなかったのである。
そこで、この稿は忍性の資料も日蓮の資料もすべてを公平に調べた上で、すべての資料が事実との仮定に立って忍性の側から叙述していったものである。
哲山堂