偉人のイメージを覆す その4

4、楠木正成                   『蟠竜昇天・楠木正成英雄伝』

 楠木正成は、尊王攘夷の朱子学イデオロギーが吹き荒れる幕末期に大きくクローズアップされた。命を捨てて後醍醐天皇を守って命を捨てたゆえに「正成になりたい」と進んで戦いに命を捨てる志士が続出した。ゆえに志士たちの革命が成就した明治になると、正成は大忠臣と顕彰されて国民の模範として教科書にまで載せられて宣伝されていった。昭和になると軍国政府は、「大忠臣・正成になれ」と若い兵士を特攻に駆り立てていった。戦後はその反動から、正成は軍国主義の権化のような存在と嫌われて完全に無視されるようになってしまった。

しかし、戦前のように無批判に崇拝されて天皇制、軍国主義に利用されるのも、戦後のようにまったく無視され否定されるのも間違っているのは当然である。そこで、この稿は正成の華麗な虚飾を剥いで、正成の真の姿を追究して、各時代に正成がどのように捉えられたのか、また、それはどのような歴史的背景があったのかを明らかにして行く。

哲山堂

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